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ミシェル設定の背景話です。
某海外企業の日本支社。
その高いビルの最上階。
上品かつ洗練された調度の支社長室に、銀の髪と青い瞳を持つ支社長は居た。
その冷たい色合いに似つかわしく、持つ雰囲気も硬質で鋭角だった。
一面のガラス張りに映るビル群を眺めていると、広いデスクの内線が来客を告げた。
と同時に開く革張りの扉。
「ちーっす」
どかどかとやかましい足音を立て入ってきたのは、高級な室内には不似合いなトレッキングの真っ最中ですと言わんばかりの格好をした男だった。
「あー疲れた。コーヒー飲みてー」
開口一番部屋の主に飲み物を催促する無礼な男に気分を害した様子もなく、支社長は内線でコーヒーを運ぶよう告げた。
「…で、調査の結果はどうだ」
受話器を置くのと同時に、ソファにどっかり腰を下ろした男に尋ねる。
「あー、はいこれ調査票。大変だったぜ実際」
男が大き目のリュックから取り出した厚めの封筒を受け取り、支社長はざっと内容を確認する。
「ご苦労。いつも助かる」
「気にしないでくれよ。先輩にはさんざん世話になったしな」
へらりと笑った男に、支社長は封筒を机に置きつかつかと近寄った。
「………後…あれはどうだ」
ソファに座る男を傍で立ったまま目線だけ見下ろすように小さく尋ねた支社長の目がやや血走っている。
そんな彼の様子をちらと見て、苦笑しながら男はリュックを探り、DVDを1枚渡す。
ひったくるように受け取った支社長は、それをデスク上のパソコンで再生させる。
そのまま画面を凝視する支店長。
『せんせい、それはなんですか?』
スピーカーから可愛らしい声が再生された。
画面に映し出されているのは、小さな子供だった。
柔らかそうな銀の髪に大きな青い目。
こちらを見つめ、不思議そうに小首を傾げている。
その映像を目にした途端、支社長の様子は豹変した。
「うぐああぁぁぁ!か…可愛いー!!」
パソコンの前でデスクをどんどんと叩き、辛抱溜まらんという様子で支社長は頭を振り回した。
…なんだか危ない人だ。
『これか?これはビデオカメラだ』
今はソファで座ってくつろいでいる男の声が再生される。
『ビデオカメラ…ぼく、うつってるですか?』
カメラを触ろうとしているのか、小さな手を一生懸命こちらに向かって伸ばしてくる。
「くぅっ…可愛いなー!パパはここだよー!」
パソコン画面に向かって手を伸ばす危ない支社長を眺め、ソファの男は「これはもう親バカじゃない。ただのバカだ」などと呟いている。
『パパやママに見せるからな。言いたいことあったら言っていいぞー』
それを聞いて、途端に畏まった様子になる子供。
『えと、えと…おとうさん、おかあさん、おげんきですか?ぼくはげんきです』
手紙の挨拶文のような言葉にでれりとなるバカ…いや、支店長。
さらに画面の子供は少しもじもじした後、照れたように続けた。
『ぼくがんばっておべんきょうします。おとうさん、おかあさん、おからだにきをつけてください。……あ、それと…えと、えと………なんでもないです』
「何なんだー!?何が言いたかったんだー!?パパなんだって聞くぞー!?」
パソコンの画面を両手でがしっと掴み叫ぶ支社長に、いつの間にか支社長の秘書が運んできたコーヒーを啜っていた男が答える。
「パパとママに会いたいんだよ。あんたらいっつも留守だろ。『ひみつ日記』にちょっぴり会いたいって書いてたぞ」
それを聞いた途端目の色を変えてソファまで飛んできた支社長は、男の胸倉を掴み揺さぶり始めた。
「何なんだその『ひみつ日記』って!あの子のか!?あの子のなのか!?何故キサマはそれを知ってる!しかも何故中身を知ってるんだ!!」
「うわわわわ!ちょ!ちょっ!と!離せ!て!」
がくがく揺さぶられ、慌てて支社長の手を振り解いた男は、髪を振り乱し目を充血させた支社長にちょっと引きながらどうどう、と両手のひらを前に出す。
「いやほら、あいつって言いたいこと言わないんだよな、小っさいクセに気ぃ遣って。だから言いたいことを書けって日記渡したワケ。表に「ひみつ日記」って書いてるヤツ」
「そ…そのあの子の秘密の日記を貴様、よ…読んだのか…」
「読まなきゃ意味ないだろが。んな凶悪な目で睨むなよなー。声に出せない要求を汲んでやるためなんだからしゃーないだろ」
「………そうか、仕方ない…許してやる。で、他には何か書いてなかったか?何か欲しいとか、何が好きとか」
「…許してやるって…まあいいや。まあいろいろ書いてたけど、主に父さん母さんに会いたいってのが多かったかな。ちょこっと帰ってやれば?」
それを聞いた途端、黒革張りのプレジデントチェアーに腰を下ろし、うなだれる支社長。
ええと何が…と声をかける男の真後ろで声がした。
「失敗したのよ」
振り返ると、そこにはプラチナブロンドを結い上げ纏めた、青い眼の美女が立っていた。
「あ、ども奥さん。お邪魔してます」
ぺこりと頭を下げる男に元気そうねと手を挙げたのは、支社の開発部門の本部長を勤める支社長の奥方だった。
男が子供の映像を持ってきたという情報を支社長秘書から聞きつけ、観に来たらしい。
力なく頭を下げる支社長をねめつけた奥方は、その真相を語った。
「この人…あの子の前だと極度の緊張で態度がおかしくなるのよ」
奥方が語るには。
久しぶりに家に戻った支社長は、まだ8歳の自分の子供の前に立ちはだかったまま言ったそうだ。
「元気でいるか?勉強はきちんとしているか?」
その前で、やはり緊張して直立不動な子供。
「はい、おとうさん。ちゃんとおべんきょうしてるです」
さらに支社長は、立ちはだかったまま続ける。
「年長者には礼儀正しく、年少者は労りの心を持って接するように」
やはり緊張して、子供も続ける。
「はい、きをつけます」
「早寝早起き、規則正しく過ごすように」
「はい、きそくただしくします」
「あと家からは出るな」
「はい、おうちにいます」
立ったまま応答を繰り返す様子は、さながら軍隊のようだったらしい。
一通り問答が終わり、時間が来たので回れ右をした支店長は、頭を抱えた奥方と一緒に会社へと戻ったそうな。
「…………何やってんだあんた……」
頭を抱えて椅子に座ったままうずくまっている支社長を見下ろし、男は思わずため息をついてしまった。
「…き…緊張してしまうんだ…。あの子の前に立つと…緊張して体が直立不動になってしまうんだ…」
うずくまったままくぐもった声で「どうしていいかわからない…」とかぼそぼそ続ける支社長。
「…で、ああいう命令口調になってしまうと。…………阿呆か」
「言うなああああ!貴様に解かるものか!あの子と自然体で話せる貴様になど……うわあああ!畜生!!」
いきなりがばっと立ち上がり、胸倉を掴んで涙を流しながら叫ぶ支社長に、うんざりなすがままにされておきながら男は再びこっそりとため息をついた。
その支社長の腕をぽんぽん叩く奥方は、やんわりと手を解き支社長を椅子に座らせる。
一息ついた男は、ややげんなりしながら支社長に聞いてみた。
「んで…なんだって家から出るなとか…」
「誘拐されたら大変じゃないか…」
再び椅子でうなだれつつぼそぼそ語るダメ親父…じゃなくて支社長。
男はこめかみを押さえて深い深いため息をついた。
以前から子煩悩だったが、それがさらにパワーアップしている。既に病気だ。
「まあ…そんなわけでまた家庭教師をお願いしたいんだけど、いいかしら?」
奥方が困ったように男に頼み込んだ。
「一人で家にいるあの子に、いろいろ教えてあげて欲しいのよ」
「了解っす。調査で飛び回る時以外は付いててやれますよ」
気軽に応えつつ、男は大きな家で一人で過ごす小さな子供に思いをはせた。
今度は特撮DVDでも持っていってやろうかな。
これは、ミシェルがまだ8歳だったころの話。
支店長の父と開発本部長の母が不在がちである代わりに、父の大学の後輩である男が、一人きりのミシェルを見かねて家庭教師を買って出てくれていた。
そんな頃の、ミシェルの家族の裏話である。
Odd family 1 完
(ミシェルのパパも大変そう、と思っている様子。どこかの父親を思い出しつつ(笑))
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これはもう、背後がしゃしゃり出ずにはいらない内容です。
クリュパパもバカ(おい)だけど、自分に素直ってある意味幸せかも…と思いました(笑
あとあと、みしぇる8さいの図がある子とデジャブりすぎて大混乱!
はやくつづきみたいなー♪(何
毎度ありがとうございます!
SSとも言えない作文ですけど、お楽しみいただけたようで何よりです。
実はクリュさんのブログを拝見して、「ああ文章にすればいいんだなあ…自分は作文下手くそだけどね、 えっへっへ」とか思ったわけなのですよ。(笑)
そんなわけで、クリュさんのブログにSSがなければ生まれなかった企画なので、本当に感謝しております。
本当に自分に素直なのは幸せだと思いますよ。(笑)
おお、ちびミシェルはどなたかとデジャブりますか!
もしや小さいクリューナ嬢ですか?
また時間が出来たら続きを書きたいと思いますので、よろしくお願いいたしますね。えへへ。
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そんなミシェルももう高校生。
最初は小学生で途方にくれてたけれど、今では楽しい学校生活・そして能力者としての戦いに自分の存在意義を見出しています。